ものすごい下書きを見つけてしまった〜私が伊野尾担兼夢女だった頃〜

以下、いつどんな気持ちの時に書いたのか全く思い出せないけどやっぱりブログに手を出すときはいつも限界なんだなとわかる虚妄物語です。(当時推定17歳)

 

 

高校生活最後の夏、誰にも誘われなくて、でもどうしても夏の終わりだから行きたくて、一人で着付けして隣町のお祭りで人待ってるふりしながらイカの丸焼きを買って食べながら公園の森散策してると、一人木の茂みの中に立ってる伊野尾くんに出会う。あんまり綺麗な人だから見惚れてると気づかれた。

『ひとりなの?美味しそうなもの食べてるね。』

と言って口の横についたタレを人差し指で拭って舐められた。いつもなら怪しくて怖いはずなのに、私は悲しさと寂しさと夏の夜の雰囲気に騙されて妙に安心してしまい 「あなたも一人なんですか?よかったら一緒にいてくれませんか?」 なんて積極的に言うと笑って承諾してくれた。

『とっても綺麗に着飾ってるのに一人なんだね。もったいないから僕と出会ってよかったね。』

木陰に射す月光で伊野尾くんの睫毛はキラキラしててぼーっとしてると 『折角だから花火見よう。』 って手を引かれる。

妙に心地いい手の感触。

隣町だから私は見知らぬ道を伊野尾くんについて行くだけで、人混みに行くのでもなく、きっと彼だけが知ってる特等席の森の灯台に連れて行ってくれた。

着くまでに花火は始まってて、爆発音と私の鼓動は共鳴してやけにワクワクしてた。あぁ、今日食い下がってきてよかったって。

灯台に着いて、しばらく花火を見て終わった後の沈黙の余韻。

「 ねぇ、どうしてあんなところにいたの?」

ふいに尋ねると、伊野尾くんは下を見て黙ったまま。急にこっちを向いて微笑んで私の頬に手を添えて、

 

『君は……とっても綺麗だよ。今日の君は特に。誰にも見られてない愛されてないなんて思うこともあるかもしれないけど、そんなことない。僕は見てる。大丈夫。』

 

私は意表も図星も突かれて勝手に涙を流してた。そのまま伊野尾くんは私の涙にキスをしてくれた。

『行こう。もう夜は遅いから。』

灯台の階段を降りて行った。

慌てて追いかけるともうそこに彼の姿はない。後ろを振り返ると今まで中にいたはずの灯台もなかった。

 

私は呆然としてその場に倒れこんで、気がつくと電車の中だった。知らないおじさんの肩を借りて寝ていて、アナウンスは最寄駅を伝告げていた。私は訳も分からないままヨロヨロと立って電車を降りた。

午後23:45。

もう今日が終わろうとしていた。

空には華奢な三日月。帯には綺麗な金平糖が吊るしつけられていた。

不思議と気分が軽くなってきて、今日の夜が夢だったのか現実だったのかなんてもうどうでもよかった。ただ、私は彼に一生恋するのだろうとその根拠のない確信だけを甘ったるい味とともに噛み締めて家へと急いだ。

 

 

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とまあこんな感じで人と触れ合わない思春期を過ごすと見事に拗らせるので青春時代は謳歌してください。 私からは以上です。